整備に従事する皆様、毎日大変お疲れ様です。
Front Mechanicの小林と申します。
今日は、サービスフロントになったからこそ受け、気がついたクレームです。
それは何か?
すごく単純なことなんです。
車検整備を終えて、車両を引き渡す際に一通り作業の説明をします。
エンジンオイルを交換して、オイルフィルターも交換。今回はベルトに亀裂がみられたので交換させていただいています。
ボールジョイントのブーツはロアアームの部分で、フロントのタイヤを下から支えているアームです。
このブーツが切れると車検に通らないため交換させていただいています。
と、このように行った作業を一通り説明して精算・引き渡しになるわけです。
しかし、お客さんの顔がなんだか曇っている・・・。納品書をじーっと見ている眼差しは何かを言いたげな・・・。
「ご不明な点でもございましたか?」
と、聞いてみると
「オタクの車検は、ブレーキパッドが前よりも増えるんだな!」
という予測もしない問いかけでした。
最初質問の意味がわからなかったんですが、その後お客さんがおもむろにセカンドバッグからファイルを取り出しました。
それは何かというと、今までの整備記録が綺麗にまとめられていたんです。
この瞬間悟りました・・。
お客さんは前回の車検整備の納品書を私に見せつけてきました。
そこには
Frブレーキパッド・・・5.0mm
Rrブレーキシュー・・・3.5mm
では今回の納品書に書いてある記載は
Frブレーキパッド・・・5.5mm
Rrブレーキシュー・・・4.0mm
どうでしょう?なんと前回よりも残厚が増えています・・。
これはありえないですよね。ブレーキって走ってれば増えることはなく、すり減って行きますから。
お客さんに不信感を抱かせ、こっぴどく叱られ、もはやぐうの音も出ない状況でした。
ではなぜこんなことが起きたかというと、整備士の問題です。
このままではまずいと私は思い、まずは前回の車検と今回の車検で、受け入れ・分解した整備士。そして作業をした整備士を調べました。
やはり前回整備と今回の整備は別の整備士が担当していました。
ここで、二人にどのようにブレーキやタイヤを計測しているかを問いただしました。
Aという整備士はアナログノギスを使って、デプスゲージでパッドとシューの真ん中部分、タイヤも真ん中の部分で計測してるとの返答。
Bという整備士は、デジタルノギスを使って、それぞれ一番減っている部分で計測していると。
余談ですが、私が初めて入社した整備工場では、古き良き昭和の匂いがプンプンした工場で、先輩方はノギスも何も使わず目視で数値を書いているのをみたことがあります。
一番やっちゃいけないことです。
私はAと同じ測定方法でした。アナログのノギスで真ん中の部分で計測です。
大型のリヤブレーキシューなどは、ブレーキシューの表面にリベットが打ってあります。
リベットからの距離を記載するのか、シューの厚みをそのまま記載するのか?そこの統一も測られていませんでした。
前も書いたことがありますが、整備士って各々ポリシーというかプライドを持って仕事をしてます。
必ずしも同僚の作業をよしとは思っていません。
自分だったらこうやって、もっと速く作業ができる!
とか
自分ならもっと丁寧に綺麗に仕事ができる!
と思っていることがあります。
少なくとも私は現役で整備をしていた頃はそうでした。
下回りの防錆塗装をするときも、私はプロペラシャフトは回転させながら綺麗に塗装しましたし、トラックなどのバッテリーホルダーは取り外してその部分だけで塗装しました。
そして塗装した後に、フェンダーなどに水性パスターのミストが飛んでいないか?万が一飛んでいたら、必ず見落とさずに綺麗に落としていました。
というのも、工場をあけっぴろげて塗装をすると、風向きでボディに付着することがあります。
完全マスキングしているわけではないので、気を遣っていました。
が、同僚の整備士はガンの圧力を相当強くして、一気に豪快に塗装していました。
きっとさっさと仕事を終えたかったんでしょう。
このように整備士のキャラクターによっては、クオリティが変わってくることがあるんです。
今回のブレーキやタイヤの残量計測もこれに近いですね。
この辺の記録に残る部分は統一しておかないとだめです。私はフロントになってからというもの、納品書を打つ際に必ず車歴で前回の残量データを確認しておきます。
万が一その数値よりも増えていたら、整備士に事情を話してもう一度計測してもらうことにしています。
納品書を取ってファイリングしているお客さんって、相当車好きな人です。そういった車好きの人からもちゃんと認められていかないと、評判が悪くなってしまいます。
計測する部分をきちんと統一する。これは非常に重要なので、覚えておいてください。